WRCとは、 World Rally Championship の略で、世界ラリー選手権と訳されています。F−1とならぶ、国際格式のモータースポーツです。
FIA(国際自動車連盟)が認定している自動車競技の世界選手権は、おなじみ「フォーミュラ・ワン」と、この「世界ラリー選手権」の2つのみなんです!つまり、自動車競技の最高峰の1つ、というわけなのです。
「ラリー」というと、パリダカ(パリ=ダカール・ラリー)を連想される方も多いでしょう。もちろん、パリダカもラリーのひとつです。ただ、WRCとは競技スタイルにかなりの違いがあります。まずは、ラリー競技について、簡単にお話ししていきましょう。
●ラリー競技の種類
ラリーには、大きく2つのタイプがあります。
◎スプリント・ラリー
通常は一般車両が走る路面(公道)をつかって、いかに早く走るか、を競うのがスプリント・ラリーです。WRCは、このタイプの競技になります。
日本では、全日本ラリー選手権がスプリント・ラリーの頂点です。世界各国にも、スプリント・ラリーの選手権があり、WRCはもっともレベルの高い大会です。
◎クロスカントリー・ラリー
普通は車が入っていかないような大自然を舞台に、非常に長い距離を走破し、そのタイムを競うのがクロスカントリー・ラリーです。多くの場合、完走するのさえたいへんなものです。
このタイプの競技でもっとも有名なのがパリダカ(パリ=ダカール・ラリー)でしょう。
●ラリーとレースの違い
レースは、決まったコース(サーキット会場など)を競技車両(レーシングカー)が一斉にスタートして周回を重ね、規定周回を終えたものから順位が決まっていきます。
ラリーは、公道を使って行われ、競技車両(ラリーカー)は一定間隔でスタートします。純粋にタイムのみを競うのです。競技区間のタイムの合計が短いものから順位が決まっていきます。
F−1とならぶ、国際格式のモータースポーツです。というより、FIA(国際自動車連盟)が認定している世界選手権はおなじみ「フォーミュラ・ワン」と、この「世界ラリー選手権」の2つのみなんです!
舗装路(ターマック)からジャリ道などの未舗装路(グラベル)、広大なサファリ、果ては雪道まで、さまざまなシーンでの全14〜16戦で戦うラリー選手権です。専用のコースではなく、一般公道を使うことが、F−1を始めとする他の自動車競技と大きく違う点です。3〜4日に渡る長丁場で勝敗が決するため、年間チャンピオンともなると「公道最速」と言われています。
(C.A.R.T.のように公道を使うレースがある、のではなくて、すべて公道を使用します)
雪道のスウェディッシュから灼熱のサファリまで、過酷な条件で走りつづけるWRCは、その年間チャンピオンともなればF−1の年間チャンピオンと同等、あるいはそれ以上の尊敬と名声を得ると言われています。
一般的に、競技1日はレグと呼ばれ、通常は3レグで構成されています。レグでは始点と終点を、決められたコース(だいたい数百km)を決められた時間ごとに進んでいきます。各レグにはSS(スペシャルステージ)と呼ばれる、一般車両を締め出した競技専用の区間が存在します。ここでのタイムを競うのがメインとなります。
右の図が、カンタンな模式図です。中央から3本の線が出ていますが、それぞれ1レグ(1日)で走るコースとお考えください。ブルーのラインに点在する濃い部分が「SS」で、ここがタイムアタック区間となります。SSを終了すると一般公道を走り、またSSに、という感じになっています。
SS以外の一般公道部分(ロードセクション、トランスポートセクション、リエゾンとも呼ばれます)では一般車両といっしょに走るため、当然交通法規に従って走行しなければなりません。時間的な余裕をもったスケジュールになっていますが、SSで受けた車体のダメージや、マシントラブルなどによる修理も、搭乗者が車載工具のみ使える、というような制限はあるものの行えるため、いくつか設けられたチェックポイントに間に合わないケースも出てきます。この場合にはペナルティとしてSSでのタイムに追徴タイムが加算されることになります。もちろん、SS区間(タイムアタック区間)でもパンクなど、必要に迫られればタイヤ交換などを行う必要が生じます。
チェックポイントでの指定時間は1分間単位で計測されるため、スタートから30分後、という指定時間の場合「スタートから30’00”から30’59”の間に通過する」必要があります。早すぎても遅れてもペナルティがあります。
計測は「コントロールエリア」で行われますが、コントロールエリアへの進入は、決められた時間の1分前から、と決められています。早く到着してしまうと1分に付き1分(60秒)のペナルティ、遅く到着すると1分に付き10秒のペナルティを受けてしまいます。ちなみに、コントロールエリア内は「パルクフェルメ(後述)」として扱われます。
各マシンは間隔を置いて出発するため、マシン同士がデッドヒートを繰り広げる、なんてことはなく、あくまでも個人のタイムが重視されています。
とはいえ、ショー的な要素の強い「スーパーSS」というものがあります。これは閉鎖された特設ステージで2台のマシンがタイムアタックをするものです。右の模式図のような立体交差を利用した特設コースを2台が走ります。赤で示したスタート地点から2台が青と紺の別々のルートを出発します。1周すると、相手のスタート地点になり、さらにもう1周を走って、結果として自分のスタート地点に戻ってくるタイプのものですので、直接競り合うことはありません。
結果として、SSでのタイムの累計が速いほど良い、ということになります。つまり、いかにSSを速く走り、TC(タイムコントロール)をいかに時間どおりに通過できるか、が勝負のポイントとなります。
なお、レグは通常、夜間は休みです。ですから、競技車両は一箇所に集めて管理され、勝手に整備したりできないようになっています。この施設を「パルクフェルメ」と呼んでいます。ドライバーはもちろんのこと、チーム関係者も立ち入ることが出来ないことになっています。ただし、例外として、フロントガラスの交換だけが認められているそうです(最低限度の安全策ですね)。
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